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技術コラム

図面通りの精度が出ない?設計者が知っておくべき『樹脂切削』の特性と公差の考え方

2026年4月13日

3D CAD上で完璧なモデルを作成し、金属部品と同じ感覚で厳しい寸法公差を設定したにもかかわらず、納品された試作品の寸法が指定通りに出ていない、あるいは全体が反ってしまっている・・・
製品開発の現場において、こうした経験を持つ設計・開発担当者様は少なくありません。

金型を用いず、材料のブロックから削り出す「樹脂の切削試作」は、量産品に近い物性テストができる非常に有効な手段です。しかし、樹脂(プラスチック)の切削には金属とはまったく異なる物理的な振る舞いがあり、それを考慮せずに図面を描くと、加工難易度が跳ね上がり、不要なコストや納期の遅れを招く原因となります。

本コラムでは、設計者が知っておくべき樹脂特有の加工特性と、試作をスムーズに進めるための公差設定のポイントについて解説します。

 

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精度を阻害する「樹脂切削」3つの特性

金属(鉄やアルミなど)と比較して、樹脂素材は柔らかく加工しやすい反面、加工中の環境や刃物の当て方によって形状が変化しやすいデリケートな性質を持っています。図面通りの精度を出すためには、以下の3つの特性を理解しておく必要があります。

  • 熱膨張(線膨張係数の大きさ)
    樹脂は金属に比べて熱に敏感で、線膨張係数(温度上昇による体積の変化率)が非常に大きいという特徴があります。切削時に発生する摩擦熱によって加工中の樹脂は膨張し、加工が終わって常温に戻ると収縮します。そのため、加工直後と測定時で寸法が変わってしまい、シビアな公差を安定して出すことが困難になります。
  • 残留応力による「ソリ・歪み」
    樹脂ブロック材は、製造(押し出しやキャスト)される過程で内部に応力(元の形に戻ろうとする力)が蓄積されています。削り出しによって表面の材料が取り除かれると、この応力のバランスが崩れ、加工後や時間の経過とともに「ソリ」や「歪み」となって現れます。特に、薄肉形状や非対称に大きく削り込む形状ではこの影響が顕著です。
  • 弾性変形とチャッキング時の歪み
    材料自体が柔らかいため、工作機械のバイス(万力)で固定(チャッキング)する際、わずかに材料が押しつぶされて変形します。その変形した状態で切削し、バイスから外すと元の形状に戻ろうとするため、平面度や平行度が崩れる原因となります。

設計者が実践すべき「公差」と形状設計の考え方

上記のような特性を持つ樹脂に対して、金属部品向けの「JISの中級・精級」といった一律の一般公差を適用するのは現実的ではありません。加工コストを抑えつつ、確実に機能検証を行うためには、設計(DFM:製造容易性設計)の段階で以下の工夫を取り入れることが重要です。

  • 機能寸法と参考寸法の「メリハリ」をつける
    すべての寸法に厳しい公差を指示するのではなく、他部品とのはめ合い(嵌合)部分、Oリングのシール面、ベアリングの挿入穴など、「機能上、絶対に精度が必要な箇所」にのみ幾何公差や寸法公差を指定してください。それ以外の外形寸法などは、できる限り緩い公差(あるいは参考寸法)とすることで、加工業者はチャッキングや刃物の選定に余裕を持つことができ、結果的に品質が安定します。
  • 内側隅アール(コーナーR)を許容する
    切削加工は回転するエンドミル(円筒形の刃物)で行うため、ポケット(窪み)形状の底面四隅には必ず刃物の半径分のR(丸み)が残ります。図面上でここを「ピン角(R=0)」にしてしまうと、特殊な極小径エンドミルで少しずつ削るか、放電加工などの別工程が必要になり、コストが急増します。「逃がし形状」を設けるか、機能に影響がない範囲で「R2〜R3」などの大きめの隅アールを許容する設計が推奨されます。
  • 吸水性や寸法安定性を考慮した「材質選定」
    樹脂の種類によっても寸法安定性は大きく異なります。例えば、MCナイロンなどは吸水性が高く、大気中の湿気を吸って寸法が膨張しやすいため、厳密な公差指定には不向きです。精度が求められる機構部品の試作には、寸法安定性や切削性の高いPOM(ポリアセタール)や、スーパーエンプラであるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などを選定するのが一般的です。

パール金属が提供する「提案型」の樹脂切削試作

有限会社パール金属では、お客様からいただいた図面をただそのまま削るだけではありません。生産技術と加工現場の深い知見を持つプロフェッショナルとして、図面から「お客様が検証したい機能」を読み取り、最適な加工ソリューションをご提案します。

  • VA/VE提案(加工性の最適化)
    厳しい公差指定や薄肉形状を見た際、「この部分の公差を少し緩めていただければ、加工時間を半減できます」「ソリを防ぐために、事前にアニール処理(応力除去)を行う工程をご提案します」といった、コストダウンと品質安定化のための逆提案を積極的に行います。
  • 適切な温度管理と加工ノウハウ
    熱膨張を最小限に抑えるための切削液のコントロール、刃物の送り速度の最適化、チャッキングの工夫など、長年培ったノウハウで限界精度の追求に挑戦します。

樹脂試作における高精度な加工事例

当社では、寸法精度や幾何公差が要求される、さまざまな業界の樹脂テストピース製作を手掛けてまいりました。

  • 事例1: フローリングの検査治具

 

  • 事例2: MCナイロン平歯車制作

樹脂加工の「困った」は、構想段階からご相談ください

「図面の段階で、どの程度の公差なら樹脂切削で現実的に可能なのか知りたい」「特殊な樹脂材を使用したいが、加工を引き受けてくれる業者が見つからない」・・・

試作加工に関するこうしたお悩みは、設計・開発の構想段階からぜひパール金属にご相談ください。金属加工から樹脂切削まで幅広い対応力を持つ当社が、材質選びから最適な図面指示のアドバイス、そして現物の確実な納品まで、お客様の開発サイクルを全力でサポートいたします。
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